Bea−Kid’sシナリオ「白い狼」

シナリオ作者:すがはら
ゲーム作者:日出山with天幻迷宮
発売元:情報企画
プレイヤーの人数:4人〜6人
プレイ時間:キャラメイクを除いて3〜4時間
シナリオのタイプ:解決型シナリオ

 情報企画から発売されている「Bea−Kid’s」用のシナリオです。



■概要
 銀鉱が発見され、鉄道敷設が計画されている街。 しかし街のすぐ近くにある森は、古い盟約で人間が立ち入ることのできない「獣人の森」とされてきました。 鉄道会社は盟約を無視し、森を切り開いて鉄道を通すことにしました。
 盟約を破った人間に対し、狼族は戦いを挑んできます。 鉄道工事は彼らの妨害により遅々として進みません。
 なお鉄道工事の人夫たちの間では、狼族の戦士たちの中でも特に“白い狼”と呼ばれる男が恐れられています。 名前のとおり肌の色が白いその戦士は勇敢で、他の戦士達の指揮をとっています。 鉄道会社は彼に高い賞金をかけています。 しかし今のところ、彼を倒せた者はいません。
 強引に森を切りひらいて鉄道を通そうとする副社長と、それに反対する女社長。 一触即発の状況に、PCたちは否応なく巻き込まれていき……。

■プレイの進行
○街の概要
 この街の名前は「サイワ」といい、ダミヤから北東に1日程度離れたところにあります。 サイワとは獣人たちの言葉で「境界」という意味です。 つまりこの街は、獣人たちと人間たちの世界の「境界」にあるのです。
 数年前まではほんの小さな農村にすぎなかったこの村も、石の壁山脈で銀鉱が見つかったことで急激に活気づきました。 鉄道が延び、多くの労働者や一攫千金を夢見る者たちが集まってきています。 しかし、村の東には黒毛狼族の住む森があり、彼らとの摩擦も絶えません。
 現在は銀鉱の労働者だけでなく、鉄道工事の労働者も大量に入ってきています。 街は活気づいていますが、同時に古い住民や労働者どうしのいさかいも多く、決して治安がよいとはいえません。

○PCの導入
(A)雇われ者
 ガンマン、アウトローのうち何人かは、副社長のウィリアムに雇われます。 表向きは「社長の護衛」ですが、ウィリアム副社長は機会があれば「社長の暗殺」へと依頼内容を変更します。
(B)流れ者
 獣人などがこのパターンになるでしょう。 何らかの理由でこの街に立ち寄ったところ、騒動に巻き込まれていきます。
(C)村の者
 数少ないパターンですが、PCのなかにこの街在住の者がいる可能性もあります。 その場合は(A)に準じるか、(B)と一緒に巻き込まれていくことになります。

○“白い狼”について
PC達は、どこかで“白い狼”の噂を聞きます。 AパターンのPCは、ウィリアム副社長が忌ま忌ましげにその名前を口にしたり、労働者が話し合っている噂を聞くことになります。 Bパターンですと、村に入ったときに怪我人を乗せた馬車が入ってきて、街の人々が噂しあっているのを耳にします。 ただし、メアリー社長の口からその名前が出ることはありません。
 “白い狼”とは、黒毛狼族の戦士の中にいる、白い肌をした強者の戦士のことです。 彼は勇敢で、他の戦士達を指揮しています。 鉄道会社では彼に賞金をかけましたが、今までのところ彼をたおせた人間はいません。

○プレイの開始
(A)パターンの展開
 ウィリアム副社長に雇われたPCは、ライン鉄道が建てたホテルに宿泊しています。 彼らは幾度となくメアリー社長とウィリアム副社長の口論に出会うことになるでしょう。 他の従業員に聞けば、普段は全く経営に口を出さないメアリー社長が珍しくウィリアム副社長に命令しているので驚いているという声を聞くことができます。 そしてウィリアム副社長は、メアリー社長を疎んじているようです。
 そしてある時、メアリー社長にいわれてPCは街に出ていくことになります。 Bパターンの人々をつれてくるためです。

(B)パターンの展開
 もしこのなかに獣人がいない場合、今後の展開が難しくなります。 街に入る前に何らかの理由をつけて、獣人のNPCをくっつけましょう(獣人の子供が街に薬を買いに行きたいけど、人間達が邪魔をしてなかなか入れてくれない、とか)。
 獣人と一緒にいることで、街の人々はPCたちに白い目を向けます。 宿屋での宿泊を断られ、食事にはありつけず、街の人々からは後ろ指をさされます。
 そしてPC達が途方に暮れたとき、馬車に載った貴婦人(メアリー社長)が通りかかり、PC達に声をかけてきます。
 メアリー社長は獣人たちに対し「獣人語」で話しかけてきます。 そしてPC達を自分のホテルに招待します。
 ホテルに着くと丁度ウィリアム副社長がロビーにいます。 メアリー社長が連れてきたPC達の中に獣人を見つけると、あからさまに嫌な顔をして追い出そうとします。 が、すぐにメアリー社長がそれを止め、PC達を自分の部屋に案内します。
 PC達の部屋は、Aパターンについてはメアリー社長を護衛しやすいように社長の部屋の隣になっています。 Bパターンについても、社長は自分の部屋の近くにある空き部屋を提供してくれます。 なお、それぞれの部屋は個室ですが、PC達が「相部屋がいい」というなら相部屋でも構いません。
 またBパターンでNPCの獣人を出した場合には、もうすぐ日が暮れるから明日帰りなさいとやさしく説得します。

 そしてメアリー社長は、PC全員とウィリアム副社長を集めます。
 メアリー社長は、「明日、あの森へ行って獣人の族長と話をしてくる」と告げます。
 ウィリアムは必死にメアリー社長を止めようとしますが、メアリー社長の気持ちは変わりません。 メアリー社長は「私は鉄道のルートを、森を迂回するよう変更しようと思っている」と宣言し、PC達に対し明日の護衛を依頼します。
 ウィリアム副社長は怒りながら、部屋を出ていきます。

その夜のこと
 その後メアリー社長は、獣人のPCを誘って街のバーへ飲みに行きます。 獣人以外のPCがついていくといった場合、メアリー社長は喜んで同行を許可します。
 バーは労働者や荒くれ者で賑わっています。 しかしメアリー社長とPCが入ると、場はしーんと静まり返ります。 獣人のPCに対し、遠慮ない不満と怒りの目が向けられます。 が、事を起こすような客はいません。 ここにいる者は皆、メアリー社長がこの鉄道工事の最高責任者であることを知っているからです。
 メアリー社長は慣れた調子で、バーのマスターにウィスキーをPCの人数分+自分の分だけ注文します。 そしてグラスがみんなに行き渡ると、乾杯してくいっと一気にあおります。
 それからメアリー社長はぐるっとバーの中を見渡し、おもむろに立ち上がると「今日は私のおごりだから、みんなぱーっとやって!」と言います。 途端、今まで静まり返っていたバーの中が歓声に満たされます。

 人間のアウトロー、あるいはガンマンが一人でいるところを見計らい、ウィリアム副社長が近づいてきます。 そしてこっそりと彼の部屋にPCを招き入れ、「明日の護衛の最中に、メアリー社長を殺せ」と命令します。 前金で報酬を渡し、成功したらさらに2倍の額を渡すと告げます。 依頼を断ろうとするPCに対し、ウィリアム副社長は「獣人達があの女を殺したことにする」とか「保安官は我々の言いなりだ。何とでもなる」などと言って、何とかPCに依頼を受けさせようとします。 最終的にPCが首を縦に振らない場合には、彼は諦めて引き下がります。

 夜中に(メアリー社長とは別に)街を歩いていたり、あるいはウィリアム副社長を見張っていた場合、日が変わる頃にウィリアム副社長が一人で外出するのを目撃します。 尾行すると、ウィリアム副社長は裏通りの小汚いバーに入ってきます。 そのバーは街のマフィア(と名乗っているだけのゴロツキ)が巣くっているところで、ウィリアム副社長はゴロツキたちと何やら話をしてます。

獣人の森
翌日の朝食のあとすぐ、メアリー社長はライン鉄道の工事現場を視察にいきます。 昨夕、獣人の子供を助けていた場合には彼も同行させます。 すでに線路は森の手前まで敷設されており、計画ではこのまま森の真ん中を切り開いて鉄道を通すことになっています。 しかしこの森は、人間と獣人との盟約で「獣人たちの土地」とされています。 そのため獣人達は、盟約を破った人間達に襲いかかってくるのです(とメアリー社長は道中話してくれます)。
 工事現場には数人の作業員がいますが、獣人達の攻撃を恐れて誰も鉄道敷設作業をしていません。 メアリー社長は笑いながら、「これから獣人の族長と交渉に行ってきます。皆さん、とりあえず今日のところは工事を引き上げてくださって結構です」と作業員達に告げます。 作業員達は街へ引き返していきます。

 獣人たちの森へ入ると、メアリー社長はまるで道を知っているかのように迷うことなく奥へと進んでいきます。
 しばらく進むと、突然前方か一本の矢が飛んできて、近くの木にささります。 見ると黒毛狼族の若者が「コノ先、我々ノ土地! 人間ドモ、出テイケ!」と片言の人間語で警告します。
 しかしメアリー社長は、懐から小さな斧を取り出し、それを掲げながら獣人語で叫びます。 「私は『白い母親』! あなたたちの友です!」
 狼族の若者はぎょっとして、警戒しながら近づいてきます。 そして狼族の若者は、一行を自分達の集落へと連れていってくれます。

 黒毛狼族の集落は、森の中央部のぽっかりと開けた場所にあります。 フェルトのテントが50ばかりあり、狼族の女や子供が働いています。
 集落の真ん中に一際大きなテントがあり、若者はこの中に族長がいるといいます。
 族長はかなりの年寄りですが、メアリー社長の顔を見るなり懐かしそうな笑顔を浮かべて話しかけてきます。 そしてメアリー社長は、族長と二人で話がしたいと言い始めます。
 その会談を待っている間、PC達に狼族の古老たちが話しかけてきます。 うまく交渉すれば、古老たちは昔話を語り始めます。
 古老の話によると、今から20年ほど昔、一人の人間の女がこの森に迷い込んできたのです。 彼女は旅芸人で、そして妊娠していました。 狼族は彼女を自分達の村に招き入れ、そして彼女はこの村で一人の男の子を産みました。
 しかし彼女は、子供を族長に託すと再び旅に出てしまったのです。
 その女の名前は「メアリー」、そしてその男の子こそ“白い狼”ユラックです。
 古老の話が終わったころ、メアリー社長が会談を終えて族長と出てきます。 そしてPCたちに、「話はまとまったわ。私たちの非礼を詫びて、森を迂回させて鉄道を走らせることを説明したの」と笑いながら話します。
 そのとき、村に狼族の若者たちが帰ってきます(森をパトロールしていたのです)。
 もちろん、先頭に立っているのは“白い狼”です。
 メアリー社長は彼に話しかけようとしますが、彼はこの森に人間が入っていることでひどく怒り出します。 まわりの人の説得にもまったく耳を傾けようとしません。
 と、族長がユラックに「この客人たちを森の出口まで送ってくれ」と命じます。 ユラックはしぶしぶ、PC達を森の出口まで連れて行きます。 しかしその間、メアリーもユラックもまったく口を開きません。

森の出口には……
 森の出口に来ると、そこにはウィリアム副社長とゴロツキ達がいます(ゴロツキの人数はPCの数+1人(“白い狼”の分)です)。 そしてウィリアム副社長はにやにやしながら、ゴロツキ達にメアリー社長とPC、そして“白い狼”を殺せと命令します。
 戦闘が始まると、ウィリアム副社長はメアリー社長を狙います。 そしてメアリー社長が怪我をしたとき、獣人語がわかるPCは、ユラックが「母さん!」と叫ぶのを耳にします。
 戦闘が終わると、ユラックはすぐにメアリー社長の元へ駆け寄ります。 メアリー社長はユラックに「立派な狼族になったのね」と優しく告げます。

エンディング
 街に戻り、メアリー社長は鉄道路線の計画変更を発表します。 狼族との戦いがなくなり、また工事が再開されるので労働者や街の人は皆喜んでいます。
 そしてメアリー社長から報酬を受け取ったPC達は、メアリー社長や街の人に見送られながら街を後にします。
 と、森の奥にある小高い山の上から声が響きます。
 みるとそこには“白い狼”がいて、PC達に手を振っています。
 そして彼は叫びます。「俺は狼族の戦士、“白い狼”! さらばだ、我等が友たちよ!」と。



《人物データ》
★メアリー・ライン
体力:普通(0) 耐久力:普通(0) 敏捷力:早い(+1)
知力:お利口(+1) 精神力:普通(0)
特技:人間語会話C、人間語読み書きB、獣人語会話B、獣人語読み書きA、回避A、
   歌唱C、ダンスC、交渉B、楽器演奏C
LV/3 IN値/1
肉体耐久値:5
精神耐久値:5
 ライン鉄道の社長です。 夫は鉄道会社を一代で築きあげた実業家でしたが、数年前に他界しています。 二人の間には子供もなく、彼女が社長に就任しました。 ただし経営については、ウィリアム副社長に任せきりです。

★ウィリアム・ブロック
体力:普通(0) 耐久力:普通(0) 敏捷力:普通(0)
知力:秀才(+2) 精神力:普通(0)
特技:人間語会話D、人間語読み書きD、法律C、商業D、交渉D、ガンA
LV/1 IN値/1
肉体耐久値:5
精神耐久値:5
武器:ロールバイパー(修正−2、ダメージ3D6、弾数6、射程中(50m))
 ライン鉄道の副社長で実質的経営者です。 メアリー社長の夫の右腕として働いていました。  しかし先代社長の死後、メアリーから名目的な経営権も奪いたいと考えています。

★“白い狼”ユラック
体力:剛力(+2) 耐久力:頑丈(+1) 敏捷力:とても早い(+2)
知力:普通(0) 精神力:普通(0)
特技:格闘D/5、回避C/4、乗馬B/3、追跡B/1、戦術C/2、気配探知C/2、
   サバイバルB/1、会話(獣人)C/2、読み書き(獣人)B/1、弓C/4、忍び足B/3
LV/2 IN値/3
肉体耐久値:6
精神耐久値:5
装備:強弓(修正−3、ダメージ3D6+3、射程遠(250m))
   槍 (修正−1、ダメージ2D6+4)
 狼族の戦士です。 ただし黒毛狼族ではなく、人間です。 (ちなみにユラックとは“白い”という意味です)。

★狼族の戦士たち
体力:剛力(+2) 耐久力:頑健(+2) 敏捷力:早い(+1)
知力:普通(0) 精神力:普通(0)
特技:格闘C/5、回避C/5、乗馬C/3、追跡C/2、戦術C/2、気配探知C/2、
   サバイバルB/1、 会話(獣人)C/2、読み書き(獣人)A/0、弓C/3
LV/1 IN値/2
肉体耐久値:7
精神耐久値:5
装備:弓(修正0、ダメージ2D6+2、射程長(100m))
   槍(修正−1、ダメージ2D6+4)

★ゴロツキのリーダー
体力:力持ち(+1) 耐久力:頑健(+2) 敏捷力:オリンピック並(+4)
知力:普通(0) 精神力:強気(+1)
特技:気配探知C/3、格闘C/6、回避C/6、乗馬C/6、銃整備C/2、
   ガンファイトC/6、連射、早業C/6、戦術C/2
LV/2 IN値/5
肉体耐久値:7
精神耐久値:5
装備:ロングバイパー(修正0、ダメージ3D6+2、弾数10、射程長(100m))

★ゴロツキたち
体力:普通(0) 耐久力:病気知らず(+3) 敏捷力:早い(+1)
知力:普通(0) 精神力:強気(+1)
特技:気配探知B/2、格闘B/2、回避B/2、乗馬B/2、銃整備B/1、
   ガンファイトB/2、連射、早業B/2、戦術B/1
LV/1 IN値/2
肉体耐久値:8
精神耐久値:5
装備:ロングバイパー(修正0、ダメージ3D6+2、弾数10、射程長(100m))





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